新しい街に暮らし始めて、ちょうど慣れた頃に体調を崩す。今までの経験から、それがやってくるのは、3ヶ月または6ヶ月経った頃。そして今回も無事に半年を超えたと思ったら、風邪を立て続けに3回引いた。
だから7月は家にいる時間も多かった。ゴロゴロと横になりながら、「よし、村上春樹を読もうじゃないか」と思った。「1Q89」の単行本3冊を古本で買ったのは多分5年くらい前。その間に引っ越した3カ所で、分厚い3冊はいつも本棚の目に見えるところにあったけれど、なかなか手が出なかった。
読んでみるとやっぱり引き込まれる。文は引き締まっているし、ちょうど息継ぎしたい時に章が変わる。登場人物たちが鮮やかで、歴史に音楽に文学に時事が練りこまれながら不思議な世界がものすごいスケールで繰り広げられていて、驚いた。
1回目の風邪でBook1を、2回目の風邪でBook2を、3回目の風邪でBook3を読んだ。Book3は展開にドキドキしすぎて、何度も次のページをちらりとめくって細目で眺めたりした。私はハルキストじゃないけれど、これを書いた村上春樹はすごいと思う。今はどっぷり読後感に浸っているところだ。
家でゴロゴロしている間、中国茶もけっこう飲んだ。台湾人の歯医者さんが「風邪にはお茶もいいよ。カテキンが殺菌してくれるから」と教えてくれた。それもいい。
台湾のお茶屋さんで何度かお茶の試飲をしたことがある。小さな茶器で小さなお茶碗でいただく。まず茶葉そのものの香りを嗅いでから、茶器に入れ、お湯を注ぐ。しばらく蒸らしてから蓋を開けて香りを楽しむ。そしてお茶碗にお茶を注いで味わう。また茶器にお湯を入れ、しばらく蒸らしてからお茶碗に注いで味わう。
丸まった茶葉がゆっくりと開いていく過程を、香りで楽しみ、味で楽しむ。二煎や三煎でなく、もっともっと七煎まで入れて楽しむのだそうだ。
そして最後に、豊かな時間を楽しませてくれた茶葉を取り出して、そのすっかり開いた姿も目で楽しみ、手で触ってご苦労様と言う。穏やかでよい時間だなぁと思う。
坪林のお茶屋さんで買った包種茶。この烏龍茶はぎゅっと丸まっていないので開きやすいのだけれど、五煎お世話になった。喉もよくなった気がする。ありがとう。